大規模災害に備えるために自然災害ハザードマップを利用する5ステップ

大規模災害に備えるために自然災害ハザードマップを利用する5ステップ暮らしを向上させる情報

よく「天災は忘れた頃にやってくる」と言いますが、これは寺田寅彦さんの有名な言葉で今でも多くの人に使われています。

自然災害が起こると、その時は真剣に自然災害に意識を向け注意を払おうとしますがしばらく経ち落ち着いてくると、どうしても自然災害に関して私たちはその恐ろしさを忘れてしまいがちになります。

そして自然災害は私たちがその恐ろしさを忘れた頃に再びやってきます。

だからと言って、自然災害をいたずらに恐れるのではなく普段から自然災害に関する役立つ情報を知識として身につけておく事でいざという時に適切な行動を取れるようにしておく事が大切です。

そのために自分の身の回りで、どんな災害が起こり得るのかを調べる事ができる「ハザードマップ」があります。

ここでは「自然災害のハザードマップ」に関して内容と使い方を詳しく説明していきます。

ハザードマップとは?

まず、ハザードマップの「ハザード」とはどんな意味なのでしょうか?英語でハザード(hazard)は危険の原因・危険物・障害物などを意味しています。

潜在的危険性という意味もあり、もっと具体的に言うと外からは見えない状態で存在する危険性という意味になります。

まさに自然災害に当てはまります。その他、「偶然」という意味もありますが、日本語では「危険」という意味の方でよく使われています。

そしてハザードマップの「マップ」とは英語でmapと書き「地図」という意味です。

つまりハザードマップ(hazard map)とは、外からは見えない状態で存在する自然災害による被害を予め予測しその被害範囲を地図上で示したものです。

予測される災害の発生地点や被害の拡大範囲および被害の大きさ、そして更に避難経路、避難場所などの情報も既存の地図上に分かりやすく図示されています。

進化するハザードマップ

スタートは試行錯誤

ハザードマップは1990年代から日本では防災面でのソフト対策として作成が進められていました。

しかし、相手が自然災害なだけに、

・どこで発生したのか?
・発生した際の大きさは?
・どの程度の規模だったのか?

などをどうしても特定するまでには及ばないものが殆どでした。

また実際に発生した自然災害が予測を超えるものであった場合、必ずしも対応できない場合もありました。こうして掲載情報として何を選択し何を削った方が良いのか?どうすればもっと見やすくなるのか?

情報が硬直化する危険性などの問題も合わせて自然災害のハザードマップは試行錯誤を続けていきました。

ハザードマップ活躍事例

実際にハザードマップが活躍した例として2000年、北海道にある有珠山(うすざん)が噴火した際にハザードマップに従い住民・観光客や行政が避難した結果、人的被害が防がれたことで大きく注目された事が挙げられます。

構造物で自然災害を防ぐ限界

構造物で被害を防ごうとした限界例としては2011年3月11日に発生した東日本大震災の際、当時、100年に一度の大災害に耐えられるとされていた構造物ですら災害を防ぐことができなかった結果が残されています。

具体的に言うと「釜石市の堤防」をご存知でしょうか?

釜石市の堤防と言えば三陸地方沿岸で相次ぐ津波災害に対処するために1978年から津波防波堤の建設がスタートし2008年に完成した、知る人ぞ知る釜石港湾口防波堤です。

湾口防波堤は、最大水深63mの海底からケーソン工法により立ち上げて作られたたもので2010年には「世界最大水深の防波堤(Deepest breakwater)」として、なんとギネスブックによる世界記録として認定されていた程の防波堤でした。

この巨大堤防は2つあり北堤は990m、それに南堤が670mの2本から構成されていました。

しかし、2011年3月11日の東日本大震災に伴う津波により無残にもケーソンが決壊、破損し水面にとどまるのはたったの北堤でわずか2割、南堤でも半分という結果を残してしまいました。

ギネスブックにも記録された巨大防波堤が自然災害の前ではあっさり飲み込まれてしまったのです。

また、地震学界では過去100年の地震記録に基づき宮城沖地震の長期予測については一定の理論化に成功しおり地震規模を示すマグニチュード(M)8程度まではほぼ予測的中できるレベルにありました。

しかし、東日本大震災のM9.0の巨大地震は想定外で地震学者は強いショックを受け無力感に陥ったといわれています。

生死を分けた避難行動

さて、「人命を最優先に確保する避難対策」として、石巻市の小学校、中有学校の適切な避難行動により全員助かった実例をご存知でしょうか?

ここからは実際に起こった震災で「想定にとらわれる」ことなく果敢に行動し助かった子ども達の大変貴重な避難行動の参考事例です。

以下、ふくい経済研究所 北条蓮英氏 巻頭言より引用し、その内容を紹介致します。

釜石市立の小学校9校生徒1,927名,

中学校5校生徒999名全員(欠席5名を除く)だ。

彼らの避難行動を再現する
グランドでサッカーをしていた釜石東中の生徒達は
地震を感じると直ちに校舎に向かって
「津波がくるぞ」
と大声で叫ぶ一方
事前に決められていた避難地の
民間介護施設に向かって走りだす。

避難路沿道付近の小学校では
耐震補強工事が完了していた校舎3階屋上に
低学年生が避難の最中だった。

中学生の「避難せよ」の
大声と走る姿をみて
教員は地上に降りるよう方針転換する。
走りながら中学生たちは
民家に向かって同様に叫ぶ。

住民は家から飛び出す。

沿道の保育園の園児の手を引きながら逃げる。

そして避難場所に着く。

ひと安心と思いきや裏山が崩れるのをみる。

中学生は危険と判断し
より高い土地のディサービスセンターへ走りだす。

そこに到着後,津波が濁水の固まりとなって
押し寄せてくるのをみて

さらに上の避難地(石材店)に向かう。
到着後間もなく津波が迫ってくる。
咄嗟に道もない雑木林にかけあがる。
間一髪助かる。

こうした現場の状況を判断しながら< 避難場所を次々と3度にわたり変更し 全員助かることができた。 奇跡と報道されるが,決してそうではない。 どうして中学生がこのような行動がとれたのか 結論からいえば,群馬大片田敏孝教授が 釜石市内小・中学校で この8年間に重ねてきた防災教育の成果といえる。 「自然の営みに畏敬の念をもち 行政に委ねることなく 自らの命を守る主体性を育てる」 との信念に基づいて 「想定にとらわれるな」, 「最善を尽くせ」, 「率先避難者たれ」 という津波避難3原則を 平時に身につける実践教 育をつみ重ねてきた。 防災の「知識」ではなく 防災に対する「姿勢」の教育をした。

【引用元:地域経済研究ies-福井県立大学】

注目されるハザードマップ

こうして、構造物で自然災害の被害を防ごうとする限界を目の当たりにした事で国や地方自治体は構造物で被害を防ぐよりも石巻市の小学校、中有学校の適切な避難行動により全員助かった例のように、人命を最優先に確保する避難対策に力を入れる事が大切として現在は、ハザードマップ により注目しています。

そして新たなハザードマップの作成、ならびに従来のハザードマップを大幅に見直しハザードマップの策定過程に地域住民を参画させることで地域特性の反映や、住民への周知、利活用の促進、さらには地域の防災力の向上を見込んでいます。

ハザードマップの種類

「洪水ハザードマップ」

主に河川の氾濫を想定したハザードマップを言うことが多いです。

堤防が破壊された際の浸水想定区域および、その際の水深を示した「浸水想定区域図」が地図上に作成されています。

「土砂災害ハザードマップ」

主に土石流の発生渓流、がけ崩れの危険地が地図上に作成されています。

「地震災害ハザードマップ」

主に液状化現象が発生する範囲大規模な火災が発生する範囲などが地図上に作成されています。

「火山災害ハザードマップ」

火口が出現する地点(範囲)や溶岩流火砕流火砕サージの到達範囲、火山灰の降下する範囲、泥流の到達範囲などが地図上に作成されています。

「津波浸水・高潮ハザードマップ」

浸水地域、高波時通行止め箇所などが地図上に作成されています。

「防災マップ」

特定の災害を対象とせず避難経路や避難場所、防災機関等の情報を表した地図の事を防災マップと呼ぶ事があります。

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