火災保険に関する確定申告の税金控除ついて詳しく解説します

火災保険に関する確定申告の税金控除ついて詳しく解説します火災保険

確定申告のシーズンになると、税金控除がいくらになるかについて、気になってくる人も出てきますね。

税金控除の中でも、火災保険に関する税金控除は税制改正があったこともあり、納税者が間違って理解していることも少なくないようです。

今回は、火災保険に関する確定申告の税金控除について、皆さんが良く理解できるように、わかりやくお伝えしていきます。

確定申告での税金控除とは

国民が納める主な税金として、所得税と住民税があります。

所得税は、国に納める税金であり、税務署に申告する必要がありますが、これが「確定申告」と言われるものです。

住民税は、地方税であり、本来は市町村に申告することになっています。

しかし、確定申告をした場合には、税務署が市町村に申告した内容を連絡してくれるため、自分で申告する必要はありません。

確定申告では、1年間の所得を計算して税務署へ提出し、納税する所得税を確定させています。

確定申告を行うのは、翌年の2月16日~3月15日(15日が日祝日の場合、翌16日)となっています。

期間内に確定申告ができなかった場合には、期間後申告となりますが、遅れた日数分や延滞税を支払う必要が出てきますので、忘れずに期間内に確定申告を行うようにして下さい。

所得税は、所得額から必要経費などの所得控除を差し引いたものに所得税率を掛けたものとして算出されます。

このようにして算出された金額から、差し引いて所得税を安くすることを税金控除と言います。

税金控除として、

・社会保険料控除
・配偶者控除
・保険料控除

などがあります。

税金控除の中で、一般の人が留意すべきものとして保険料控除が挙げられます。

生命保険料控除については、加入額に対して新制度は最大4万円、旧制度は最大5万円が控除されるなど一般への理解が浸透していると言えます。

ところが、損害保険に関し、特に火災保険については、2007年1月に税制改革があったこともあり、一般への理解の浸透が十分ではないようです。

火災保険の保険料控除については、次の章で詳しく説明していきます。

火災保険の保険料控除について

2017年1月に国の税制改革が行われ、損害保険料控除の制度が廃止されています。

損害保険料控除の対象となっていた、火災保険や傷害保険について、保険料控除が行われなくなったということです。

そのため、基本的には火災保険に加入しても保険料控除は行われません。

火災保険は保険料控除されないのはなぜか

火災保険に関する保険料控除について、税務署や損害保険会社に数多くの問合せがあるようです。

それだけ火災保険に加入している世帯が多く、火災保険の保険料控除が廃止されたことに対し、批判の声もあがっているようです。

どれぐらいの世帯が火災保険に加入しているかというと、持ち家のケースでは、住宅ローンに入るときに保険に入ることが義務となっている場合が多く、低く見積もっても60%以上は加入していると見られています。

また、アパートなどの賃貸で借りているケースでは、火災保険に加入することが契約する条件になっている場合がほとんどであり、ほぼ100%が加入していると言われています。

このようなことから、全体として見ても、約80%以上の世帯が火災保険に加入していると言えます。

そのため、火災保険に対する保険料控除への要望は、根強いものがあるようです。

税金控除については、国が総合的な面から判断して決めていることであり、単に税金を安くすることが目的の制度ではありません。

以前は火災保険の加入者が少なかったため、それを促進するために税金控除を行っていたけれども、その役割は果たしたことから、火災保険の税金控除が無くなったと言われています。

その代わりというべきか、地震保険料控除の制度が新設されています。

近年でも、東日本大震災や熊本震災などの大きな地震も起こっている地震国の日本ですが、世帯での加入率が20~30%程度と低いため、地震保険への加入を促進することが狙いであるようです。

地震保険料控除

2007年1月に国の税制改革に伴って、地震保険料控除の制度が新設されています。

地震保険は、単独で加入できるものではなく、火災保険に付帯して契約することになります。

誤解している人が多いのですが、保険料控除の対象となるのは、地震保険に該当する部分のみです。

地震保険を付帯した火災保険について、火災保険料全体が保険料控除の対象になるように思いがちですが、火災保険の部分は控除されません。

逆に、地震保険が付帯されているのに、火災保険だから保険料控除の対象にならないと思って、地震保険の部分も保険料控除を行わない人もいるようです。

適切な税金控除を行うために、地震保険料控除についての理解を深めるようにして下さい。

地震保険料控除の金額は、下記のとおりです。

支払い保険料控除額
所得税保険料が5万円以下の場合1年間の保険料の全額
保険料が5万円超える場合5万円
住民税保険料が5万円以下の場合1年間の保険料の1/2の金額
保険料が5万円超える場合2万5000円

複数年の地震保険料を一括で支払ったというケースがありますが、まとめて申告することはできません。

一括で支払った保険料を保険期間で割って、1年分に換算した金額を導き、それが控除対象の保険料となります。

複数の地震保険に加入している場合には、合計した保険料が控除対象の保険料となります。

また、確定申告で地震保険料控除を行うためには、地震保険料控除証明書が必要です。通常は、損害保険会社から9~10月に発送されてきます。

地震保険料控除証明書を紛失などした場合には、損害保険会社から入手するようにして下さい。

また、会社などに勤務している人が地震保険料控除を受ける場合には、「平成○年分 給与所得者の保険料控除及び配偶者特別控除の申告書」の書類を勤務先に提出する必要があります。

「平成○年分 給与所得者の保険料控除及び配偶者特別控除の申告書」のことを以下では、「申告書」と表します。

申告書は、国税庁のHPにおいて、「申請・届出様式」の「国税庁 様式 検索」でキーワード検索して入手することができます。

地震保険料控除を受けるためには、申告書の左下欄にある「地震保険料控除」の部分を記入する必要があります。

地震保険料控除証明書に記載されているものを見て、下記の項目を記入して下さい。

・保険会社等の名称
・保険会社等の種類(目的)
・保険期間
・保険等の契約者の指名
・保険の対象となった家屋等に居住 又は 家財を利用している者等の指名
・あなたとの続柄
・地震保険料 又は 旧長期損害保険料の区分
・本年中に支払った保険料の金額

申告書の提出期日は、その年の最後の給与を受ける日の前日までとなっています。申告書と一緒に、地震保険料控除証明書も必要です。

もし、地震保険料控除証明書の提出が遅れる場合には、次の年の1月31日までに提出することで、保険料控除を受けることが可能です。

尚、地震保険を勤務先で、団体特約などの加入の場合には、地震保険料控除証明書が不要となる場合があります。

申告書・地震保険料控除証明書の提出は、会社などに勤務している人には、「年末調整」いう言葉で馴染みも深いと思いますが、事前に準備をしておくようにして、期日が迫ってから慌てないように心がけて下さい。

もし、年末調整で対応できなかった場合には、確定申告の期限は翌年の3月15日なので、近くの税務署に行って、自分で対応することが可能です。

火災保険の保険料控除に関する経過措置

2007年1月に損害保険料控除の制度が廃止され、火災保険の保険料控除が行われなくなったことは、以前に記載したとおりですが、保険料控除に関する経過措置というものがあります。

この経過装置は、長期損害保険として、2006年までに火災保険に加入している場合には、保険料控除の対象となる場合があるというものです。

具体的に記載すると、下記の条件を満たす火災保険については、旧長期損害保険料として地震保険料控除の対象となります。

・2006年12月31日までに締結した契約
・満期返戻金などがあって保険期間が10年以上ある契約
・2007年1月1日以後に契約内容の変更を行っていない

2006年12月31日までに契約している、積み立ての火災保険などが該当してきます。

火災保険には、「掛け捨て」と「積立」の2種類があります。

掛け捨て型の火災保険に入っている世帯が多いですが、満期金がもらえることもあって、積立型の火災保険に加入している世帯もいます。

2006年12月31日までに10年以上の保険期間のもので、積立型の火災保険に入っている世帯は、満期金がもらえることに追加して、地震保険料控除を行えるというメリットがあるわけです。

旧長期損害保険料としての地震保険料控除の金額は、下記のとおりです。

支払い保険料控除額
所得税保険料が1万円以下の場合1年間の保険料の全額
保険料が1万円~2万円の場合1年間の保険料の1/2の金額+5000円
保険料が2万円超える場合1万5000円
住民税保険料が5000円以下の場合1年間の保険料の全額
保険料が5000円~1万5000円の場合1年間の保険料の1/2の金額+2500円
保険料が1万5000円超える場合1万円

また、確定申告で、旧長期損害保険料としての地震保険料控除を行う場合も、地震保険料控除証明書が必要です。

地震保険と、経過措置対象の火災保険の両方がある場合には、地震保険料控除の金額は、下記のとおりです。

支払い保険料控除額
所得税地震保険の控除額と経過措置対象の火災保険の控除額の合計が5万円以下の場合地震保険の控除額+経過措置対象の火災保険の控除額
地震保険の控除額と経過措置対象の火災保険の控除額の合計が5万円超える場合5万円
住民税地震保険の控除額と経過措置対象の火災保険の控除額の合計が2万5000円以下の場合地震保険の控除額+経過措置対象の火災保険の控除額
地震保険の控除額と経過措置対象の火災保険の控除額の合計額が2万5000円超える場合2万5000円

但し、1つの契約の保険において、地震保険料控除と、旧長期損害保険料としての地震保険料控除の両方に該当する場合には、いずれか一方を選択することになります。

例えば、10年以上の保険期間のものである積立型の火災保険に、地震保険が付帯している場合などが該当します。

火災保険の保険金を受けたときの税金について

火災保険や地震保険の保険金が支払われたとき、税金がどうなるかを気にしている人が少なくないでしょう。

火災や地震などの災害にあった場合、火災保険を契約している損害保険会社から保険金が支払われます。

保険金は、契約内容に応じて数十万円から、場合によっては数千万円まで支払われることがあります。

かなり大きい金額になる場合がありまから、税金がどれぐらいになるか気になるところですね。

火災保険の保険金は非課税となる

火災保険や地震保険の保険金を受け取っても、保険金に対する税金はかかりません。

火災保険や地震保険の保険金が非課税である理由は、損害保険の目的が、火災や地震による自然災害で受けた損害に対する補償であるとの考えに基づくものだからです。

つまり、保険金受取人は、保険金を受け取っても、利益を得るということではなく、自然災害などによって生じた、損害の補填としての金額を得るということです

このような場合には、国の税の考え方として、非課税となるわけです。

また、受け取った保険金が損害額を上回っても、損害額を超えた部分に対し、課税されることはないようです。

雑損控除などを受ける場合の注意点

火災保険や地震保険の保険金を受け取っても、非課税であることは既に記載したとおりですが、雑損控除や、災害減免法による所得税の軽減免除を受ける場合には、保険金が減額されることがあります。

雑損控除とは、災害などで資産に損害を受けたときに、一定の所得控除を受けることができるというものです。

雑損控除は、火災などの災害のほか、盗難や害虫による被害も対象となっています。

また、雑損控除は、火災保険や地震保険に未加入でも使うことができる制度です。

意外と知られていない制度ですので、被害にあったときには、積極的に使用することを考えてみて下さい。

雑損控除の金額は下記のとおりです。まず、差引損失額を導き出します。

差引損失額=損害金額+災害関連支出金額-保険金などによる補填金額

損害金額は、実際に発生した損額金額であり、災害関連支出金額は、修理費用などの金額です。

確定申告で申請するときには、領収証などが必要となってきます。そして、雑損控除の金額は、下記のうち、金額が多い方を適用することができます。

差引損失額-1年間の所得の金額×10%
災害関連支出金額-5万円

災害減免法による所得税の軽減免除とは、災害によって受けた住宅・家財の損害が時価の1/2以上であり、災害にあった年の所得金額が1000万円以下のとき、雑損控除を受けない場合、所得税が軽減または免除されるというものです。

雑損控除は災害以外の損害も対象となりますが、災害減免法は、火災や地震などの自然災害のみが対象となります。

災害減免法による所得税の軽減免除の金額は、下記のとおりです。

所得金額軽減または免除される所得税の金額
500万円以下所得税の全額
500万円~750万円所得税の1/2
750万円~1000万円所得税の1/4

災害減免法による所得税の軽減免除のことを以下では、「軽減免除」と表します。

雑損控除や軽減免除を受けると、火災保険や地震保険の保険金が減額されます。

損害額の全額に相当する保険金を受け取る場合には、雑損控除や軽減免除が受けられないことがあります。

その場合には、満額の保険金を受け取る方が良いか、保険金を減額しても、雑損控除や軽減免除を受けた方が良いか、について考えてみて下さい。

地震保険では、損害額の50%までしか保険金が出ないので、雑損控除や軽減免除を受ければ良いと思います。

このようなことも正しく理解して、確定申告を行うことが大切になってきます。

保険料負担者と保険金受取人が異なる場合

火災保険や地震保険の保険金を受け取っても、非課税であることは既に記載したとおりです。

火災や地震による自然災害で受けた損害に対する補償であるとの考えに基づくからですが、保険料負担者と保険金受取人が異なる場合には税金がどうなるかについて気になる人もいると思います。

例えば、生命保険の場合には、契約者や被保険者と、保険金受取人が異なるというケースは多く、家族が死亡保険金を受け取るときに、相続税や贈与税などがかかってきます。

では、火災保険や地震保険のような損害保険の場合にはどうなるのでしょうか?

火災保険や地震保険の場合には、保険料負担者と保険金受取人が異なっていても、保険金に税金はかかりません。

つまり、保険料を誰が負担しても、保険金受取人が受け取る保険金は非課税となります。

火災保険や地震保険は、建築物の所有者が被保険人となり、被保険者が保険金を請求して、被保険者に保険金が支払われます。

このときに、建築物の所有者以外の人が保険料負担者であったとしても、建築物の所有者である被保険者に保険金が支払われ、それに対して贈与税などの税金はかかりません。

賃貸不動産に対する火災保険について

自宅に対する火災保険の保険料は、保険料控除の対象にならないことについて、以前に記載したとおりです。

では、地震保険の保険料について、アパートやマンションなどの賃貸不動産の場合は、保険料控除が行われるのでしょうか?

火災保険の保険料の取り扱い

賃貸不動産の場合において、支払っている地震保険の保険料は、自宅とは違って地震保険料控除の対象とはなりません。

賃貸不動産の場合には、火災保険や地震保険の保険料は、事業所得や不動産所得の経費として取り扱うことになります。

ここで、注意が必要なのは、複数年分を一括払いしても、当年分しか必要経費として認められないということです。

翌年以降については、その年に該当する保険料分を必要経費とすることになります。

また、火災保険によっては、満期返戻金がある場合があります。

その場合は、当年部の保険料が全て必要経費とはならず、積立分を差し引いたものが必要経費となります。

保険料のうち、必要経費となる部分がいくらになるかは、損害保険会社に問い合わせて下さい。

また、賃貸不動産の一部を自宅として使用している場合も注意が必要となります。自宅の部分の保険料は、必要経費とはなりません。

そのため、面積割合によって、自宅部分と賃貸部分を分けて保険料を計算し、必要経費を導き出すことになります。

自宅部分に関しては、地震保険料控除などでの対応となります。

火災保険の保険金の取り扱い

自宅に対し、火災保険や地震保険の保険金を受け取る場合には税金がかからないことは、以前に記載したとおりです。

アパートやマンションなどの賃貸不動産の場合は、どうなるのでしょうか?資産に関する部分は、必要経費とみなされて、非課税となります。

受け取った保険金が損害額を上回っても、損害額を超えた部分に対し、課税されることはありません。

しかし、収入になる部分については、税金がかかってきます。

業務休止の補填などのように利益の補償に対して支払われる保険金は、必要経費とはみなされず、課税されることになります。

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