損害保険会社は就活生に大人気。
その最大の理由は年収の高さにあるでしょう。
三メガ損保の平均年収(平成27年度)は、
東京海上ホールディングス(以下略してHD) 平均年収 1,436.8万円(平均年齢 43.2歳)
MS&ADインシュアランスグループHD 平均年収 1,146.5万円(平均年齢 47.0歳)
損保ジャパン日本興亜HD 平均年収 1,169.8万円(平均年齢 43.4歳)
確かに高い!
でも、年収の高さだけに惹かれて損保を目指すと、後々悔やむことになりかねません。
あなたの望む未来がここにあるかどうか、その仕事内容と業界の動向をわかりやすく解説します。
目次
1.仕事内容
1-1 営業
1-2 企業営業
1-3 リテール営業
2.損害サポート
3.本社
3-1 商品開発
3-2 資産運用
3-3 海外部門
3-4 その他管理
4.業界の動向
4-1 業界再編第一幕
4-2 業界再編第二幕
5.今後の動向
1.仕事内容
1-1 営業
大半の保険商品の販売は、損害保険会社ではなく、代理店が行います。
損害保険会社の営業とは、代理店のサポートとコンサルティングと言っていいでしょう。
担当する代理店によって、企業営業・リテール営業に大別されます。
それぞれに、国内・海外転勤のある全域型社員と、転居を伴う転勤のない地域型社員がいて、給与に差があります。
全域型の総合職は、3~5年で全国転勤があります。
1-2 企業営業
あらゆる業種の大手企業と企業内保険代理店を担当します。
顧客企業のあらゆる活動を把握して、未来に起こりうるリスクを探し出し、最適な保険商品と事故を未然に防ぐリスクマネジメントを提案します。
そのため、経済紙や業界紙、担当企業のHPなどに欠かさず目を通し、情報収集に努めています。
例えば、企業向けとして、以下のような商品があります。
・社屋や工場などの施設に関わる保険
・社用車など車両の保険
・労働災害保険
・従業員の福利厚生に関する保険
・個人情報漏洩による損失を補償する保険
・物流に関わる保険
・生産物賠償責任保険(PL保険)
・店舗休業保険
・海外展開におけるリスクをカバーする保険
・新規事業展開におけるリスクをカバーする保険
このような多様な商品を提供するので、従業員規模が数万の大手企業グループでは、保険契約が年間100億円を超えることもあります。
1-3 リテール営業
特定地域の保険代理店を担当し、あらゆるサポートをしながら、代理店に課せられたノルマを一緒に達成するのが仕事です。
保険代理店には保険を専業とする代理店と、保険販売以外の本業を持っている代理店があります。
兼業代理店の本業は、自動車販売会社、整備工場、不動産会社、会計事務所、税理士事務所、旅行代理店、銀行などで、本業の顧客に保険を販売しているのです。
代理店が契約を獲得しなければ、営業の成績は上がりません。
複数の会社の保険を扱う専業代理店には自社の保険を第一に売ってもらわなければなりませんし、旅行代理店には旅行とセットで自社の旅行傷害保険を売ってもらわなければなりません。
そのため、営業は代理店にあらゆるサポートやコンサルティングをしますが、その例として、次のようなことがあります。
・新商品の説明
・新規契約獲得のための市場調査
・代理店経営に関わる提案
・新人向けの保険の勉強会開催
・販売戦略の提案と指導
・顧客訪問への同行
時には、兼業代理店の本業の手伝いをすることも。
代理店であるカーディーラーのために車を売った、という話もあります。
営業は代理店や契約者の信頼を得、密な人間関係を構築する必要がありますので、人付き合いが好きでコミュニケーション能力が高い人に向いているでしょう。
既存代理店のサポートだけでなく、優秀な人材を発掘し、新たな代理店を育てることも、リテール営業の重要な仕事です。
2.損害サービス
保険の契約者が実際に事故や自然災害などで損害を被った際、契約者とやり取りし、支払保険金額の決定をするのが仕事です。
自動車事故の場合、単に保険金を支払うだけではなく、事故の加害者となった契約者の代理人として、被害者となった相手方との示談交渉も行います。
被害者側は感情的になっている場合もあり、難しい交渉になることも少なくありません。
加害者側も、多額の損害賠償金、罪悪感、被害者側や周囲からの非難などで、多大なる精神的負担を負っています。
両者の不安や苦痛を安心に変えるため、とにかく双方の話に耳を傾け、主張すべきことは主張し、粘り強く交渉を重ねて解決に導く高度で重要な仕事です。
被害者・加害者とのやり取りだけでなく、被害者側の保険会社へ責任割合を交渉したり、医療機関へ保険対応の連絡をしたり、修理工場へ行って車の傷を確認したり、業者と話し合って修理費の確定をしたりします。
法律や専門分野の幅広い知識と交渉力が求められる仕事です。
そして、この仕事を長く続けていくには、プラス志向で気持ちの切り替えが早く、ストレス耐性が強い人が向いているでしょう。
3.本社
3-1 商品開発
企業の業種や形態は多種多様で、汎用的な保険商品では対応できない場合が多く、その企業に合わせたオーダーメイド商品が多数作られています。
顧客の要望に応じ、リスクの特性や規模を見極め、適切な保険を設計して引き受けることを「アンダーライティング」と言います。
アンダーライターは、アクチュアリー(保険数理の専門家)と保険料率について協議しながら、最適な商品を設計します。
一方、汎用としての新商品の開発も常に行われています。
2015年は、ドローンの保険が各社から販売されました。
社会は常に変化し、どの業界も新しい商品を次々売り出しますから、損害保険の新商品も次々生まれていくことでしょう。
3-2 資産運用
顧客から預かった保険料を、安全性と流動性(換金性)を重視しながら、収益性も狙って運用します。
人間の経験と金融工学的アプローチを駆使して、最適なポートフォリオを構築します。
数兆円の資産を運用するので、プレッシャーも大きいですが、エキサイティングな仕事でもあります。
3-3 海外部門
海外部門は元々日系企業の海外進出に伴って設置されました。
もちろん、今でも、日系企業のため大きなリスクを伴う海外展開をサポートすることは、重要な仕事です。
しかし、今、各社が最も力を入れているのは進出先各国の市場でシェアを拡大することでしょう。
国内市場で培った商品開発力、きめ細かなサービス、大きな資本を武器に、先進国、新興国、それぞれに戦略を立てて、収益の拡大を目指しています。
3-4 その他管理
経営企画部、人事部、経理部、広報部、コンプライアンス部など、様々な部署が会社を支えています。
4.業界の動向
4-1 業界再編第一幕
1990年代前半まで、損保業界は「護送船団方式」と呼ばれ、さまざまな法律や規制に従って、損害保険各社が同じ保険を同じ金額で販売してきました。
ところが、後半から始まった自由化・外資系の参入をきっかけに、相次いで損害保険会社が合併。
各社が独自の保険商品を作り、独自のサービスを提供するという本格的な競争が開始されました。
《2001年》 大東京火災海上保険と千代田火災海上保険が合併 → あいおい損害保険株式会社
同和火災海上保険とニッセイ損害保険が合併 → ニッセイ同和損害保険株式会社
三井海上火災保険と住友海上火災保険が合併 → 三井住友海上火災保険株式会社
日本火災海上保険と興亜火災海上保険が合併 → 日本興亜損害保険株式会社
《2002年》 安田火災海上保険と日産火災海上保険と大成火災海上保険が合併
→ 株式会社損害保険ジャパン
《2004年》 東京海上火災保険と日動火災海上保険が合併 → 東京海上日動火災保険株式会社
4-2 業界再編第二幕
自由化から20年後の2010年、再び大規模な業界再編が行われました。
三井住友海上グループHDとあいおい損害保険、ニッセイ同和損保が統合
→ MS&ADインシュアランスグループHD
損保ジャパンと日本興亜損保が統合 → 損保ジャパン日本興亜HD
これに東京海上HDを加え、損保業界は「三メガ体制」に。
国内市場は人口減少や自動車離れなどで縮小傾向にあり、
各社とも本業の損保事業の収益が悪化したため、統合でコスト削減を図った結果でした。
5.今後の動向
国内市場が成熟している今、業界内での競争が激化しています。
お客様の求める商品を生み出す企画力、代理店やお客様との強い信頼関係を築くためのコミュニケーション能力、未成熟な市場のある海外へ出て行く語学力などが、ますます求められるようになるでしょう。
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